心と体の緊張をゆるめる「漸進的筋弛緩法」―意図的に力を入れて抜くことで深いリラックスを促すセルフケア法
ストレスを感じているときわたしたちの体は無意識に筋肉が緊張状態になっています。漸進的筋弛緩法は、筋肉にチカラを入れて緊張させたあと一気に緩める動作を繰り返すことでリラックスしていく方法です。いつも体にチカラが入っていてリラックスできず心も落ち着かないというかたにおすすめです。今回はリラクゼーション法のひとつである漸進的筋弛緩法についてご紹介します。
漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)とは
漸進的筋弛緩法は、筋肉にチカラを入れたり緩めたりすることで意図的に心と体がリラックスした状態を作り出すリラクゼーション法です。アメリカの生理学者エドモンド・ジェイコブソンによって開発されました。
漸進的とは「少しずつ進む」という意味で、急激に変化するのではなく段階を踏んで徐々に進んでいく様子を表す言葉です。筋肉にチカラを入れた直後に一気に脱力させることによって、その部分のチカラが抜けてリラックスしている状態を味わえます。体が緊張している状態、リラックスしている状態、これら両方の違いを心と体で理解し継続して行うことで、不安や恐怖などのネガティブな感情を抱えて体が緊張していると気づいたときに、意識しなくても自分を落ち着かせてリラックスできるようになります。
漸進的筋弛緩法のポイントと注意点
漸進的筋弛緩法のポイントは、60〜70%のチカラを入れることです。自分にとって気持ち良いと感じられるチカラで行いましょう。チカラを抜くときはストンと一気に抜き、じわーっと、ぽかぽかーっとした余韻が感じられたら十分です。漸進的筋弛緩法を行う際は呼吸も意識して行います。深い呼吸を意識することで筋肉がリラックスしやすくなるためです。
また、以下に該当する場合はかかりつけのお医者さんに相談が必要です。
- 重度の肩こりや腰痛などがあるかた
- 循環器系の病気があるかた
- 強い疲労感があるかた
- 実施すると痛みや不快感などを感じるかた
漸進的筋弛緩法の方法
漸進的筋弛緩法を始める前にまずは腹式呼吸でゆっくりと呼吸をととのえましょう。手を例に、漸進的筋弛緩法の基本的な方法をご紹介します。基本的な動作を身に着けたらその他の部位ごとに行ってみましょう。
①親指を中にいれて包み込むようにして握りこぶしを作ります。息を吸いながらチカラを入れて緊張させた状態を約5秒間キープします。
②息を吐きながら一気に緊張を緩め、15〜20秒ほど脱力した状態を続けます。
この動作を2〜3回繰り返しましょう。脱力の際に筋肉が緩み、じわっとほぐれていく感覚をゆっくりと観察します。実際に行うと、体中の血流がよくなりぽかぽかと温かくなる感覚、それに伴い心が柔らかくなりほっとするようです。こういう時間ってきっととても大切なのではないでしょうか。
その他の部位
筋肉をしっかりと意識しながら行うことが大切です。基本的には全身の筋肉を順番にしていくものですが、緊張が強い部分だけ行ってもよいでしょう。
- 腕(肘を曲げてチカラこぶを作る → 肘を伸ばし手の平を広げ脱力する)
- 肩(両手は真っすぐ下に伸ばした状態で両肩を縮める → ストンと下ろして脱力する)
- 背中(背中側で手を組み、肩甲骨を寄せる → 腕を元に戻して脱力する)
- 頸部(歯を食いしばり、あごを胸のほうへ寄せる → 顔とあごを元に戻して脱力する)
- 顔(目は硬く閉じ、口はおちょぼぐちにして中心に集めるイメージで顔全体をぎゅっとすぼめる → 目や口などのパーツを元に戻すようにして脱力する)
- お腹(お腹をぐっと凹ませる → 緩めて脱力する)
- 臀部(肛門周辺の筋肉をきゅっと引き締める → チカラを緩めて脱力する)
- 下肢(両脚を伸ばし、かかとを床につける。ふくらはぎを伸ばすように両脚のつま先を体にひきつける → チカラを緩めて脱力する)
漸進的筋弛緩法を行うと深くリラックスした状態になるため、急に立ち上がると転倒してしまう危険もあります。一通り終えた後は、体の各部位に緊張が残っていないかを確認します。そしてゆっくりと深呼吸しながら背伸びをしたり軽くストレッチをしたりして、心と体を通常モードに戻してから立ち上がりましょう。
漸進的筋弛緩法の効果
漸進的筋弛緩法は緊張してこわばっている体と、穏やかにリラックスしている体を交互に意識するトレーニングです。継続しているうちに自分の心と体の状態に気づけるようになります。どんなときに心拍数が上がり緊張しやすくて、体にチカラが入ってしまうのかが自分でわかるようになると、ストレスや不安、不快感、恐怖などのネガティブな感情にとらわれなくなるのです。緊張していると気づいて体をリラックスしている状態へとコントロールできるようになるため、ストレスが軽減されます。ストレスが軽減されると自律神経のバランスもととのい、睡眠の質向上にも繋がります。
自分の心と体の健康を守るセルフケアの重要性
今回ご紹介している漸進的筋弛緩法のほかにも、合掌のブログで度々ご紹介しているマインドフルネスや瞑想などストレスと上手に付き合っていくためのセルフケア方法はさまざまです。ストレスで苦しくて辛いとき、イライラが収まらないときなどに自分で簡単にできるセルフケア方法があれば心強いですよね。自分の意志で行動を起こし、自分の心と体の状態が少しでもよくなった、自分で健康を守れた!と実感することが大切です。自分の心と体の健康を守るセルフケアは、今後の日々の暮らしで必ずや頼りになる味方となります。
漸進的筋弛緩法で心と体を労わる時間を作ろう
今回はリラクゼーション法のひとつである漸進的筋弛緩法をご紹介しました。体の筋肉を意図的に緊張させてストンと一気に脱力することで、深いリラクゼーションを得られるのが漸進的筋弛緩法です。継続して行いセルフケアとして身に着けることで、自分の心と体がどのような状態にあるのか繊細に気づけるようになります。自分の心と体に向き合って大切に労わる時間を作ってみませんか。
体のチカラを抜いてじわじわと温かくなりほぐれていく感覚に集中していると、気が休まり凝り固まった心もきっと、柔らかく穏やかになるでしょう。皆さんの今日が穏やかな日でありますように。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。