子育てに疲れたら、呼吸を整えよう

子育てとマインドフルネス
現在子育て真っ只中の方、少し手が離れてきた方や、子育てが落ち着いて一段落した方などさまざまかと思います。
家事、育児、また在宅ワークをしている方は仕事などがあると思いますが、これらを自分のペースで進められない時に、「疲れた」とゲッソリすることもあるでしょう。
また、自分の自由な時間が取れない時にも、ストレスが溜まりイライラしてしまう日もあるのではないでしょうか。
やらなくてはならないことと時間に追われ、心も体も疲労困憊である時、私たちの呼吸は浅くなりがちです。
好きな音楽を聴いたり、ストレッチをしたりなど、リフレッシュ方法は多く存在していますが、なかなか自分に合った方法が見つからないという方もいらっしゃるかと思います。
今回は、子育てに疲れた時のリフレッシュ方法の1つとして「マインドフルネス瞑想」をご紹介したいと思います。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは、簡単にいうと、「今、この瞬間」ありのままの自分の心と体に意識を向け集中している状態をいいます。科学的な研究も進んでおり、マインドフルネスは私たちの心と体の健康に多くのメリットを生み出すことが分かっています。
皆さんは、「今、この瞬間」を意識できているでしょうか。
私たち人間は、無意識のうちに、あれやこれやと過去や未来に意識を向けてしまう傾向があります。
・過去に起きた出来事を思い出して悲しい気持ちになる
・これから先の未来を想像してワクワクする、逆に不安になる
・何らかの考えに囚われて苦しむ
このように、もう変えられない過去を悔んだり、根拠のない想像で身体中がいっぱいになったりすると、今目の前で起きている事柄や状態が見えなくなり、上の空になってしまいます。
今を生きているのに、「今、この瞬間」に居続けることはなかなか難しいものです。
あらゆる物事において、良い、悪いなどの判断をせず「今、この瞬間」目の前の現実を意識し、五感を研ぎ澄まして観ると、集中力や注意力が高まり、日々の生活で気づかなかった物事に気が付くようになります。
「今、この瞬間」の現実で、自分自身の心が満ちていれば、不安やイライラなどに振り回されなくなり、穏やかで静かな心、つまりマインドフルネスな状態でいられるようになります。
マインドフルネスで得られる効果
マインドフルネスは、私たちにさまざまな効果をもたらしてくれることが、多くの研究によって科学的・医学的にも実証されています。
ここでは、数週間から数か月継続することで得られる短期的な効果と、半年から1年以上の継続で得られる長中期的な効果に分けてご紹介します。
【短期的な効果①】睡眠の質が向上する
マインドフルネスの短期的な素晴らしい効果として、睡眠の質が高まることが確認されています。心も体もリラックス出来るため、交感神経と副交感神経のバランスが整い、深く眠れるようになるのです。
産後、体力もしっかり戻っていない状態ですぐに始まる24時間体制の育児。授乳中の睡眠不足は、多くの方が経験する悩みの1つです。
特に、初めての子育ての場合、「赤ちゃんのお世話の仕方はこれで合っているのかな」と緊張や不安で心も体もいっぱいになってしまう方も多いでしょう。
睡眠不足に加えて、心配事でいっぱいな状態では、心身ともに悪影響を及ぼしかねません。
生後半年を過ぎると、授乳回数や睡眠のリズムが整ってくる赤ちゃんが多いといわれていますが、個人差もあります。
1歳を過ぎる頃までは、まだまだ睡眠時間はあまり取れないかもしれませんが、短い時間でも「スッキリした」と感じられるように、睡眠の質を良くすることが大切です。
【短期的な効果②】不安、ストレスを取り除いてくれる
マインドフルネスの短期的な効果として、不安やストレスを取り除いてくれることが分かっています。
私たちの脳には、無意識にぼんやりとしている状態でも、雑念や思考が取り留めなく湧き出てくる「デフォルト・モード・ネットワーク」という神経回路が存在しています。
例えば、雨の日、部屋でブロックやミニカーなどのおもちゃで遊んでいる子どもが、やっとお昼寝して一息ついた時、ぼーっとしているつもりでも脳内では神経活動が行われています。
「眠たいけど、おもちゃを片付けないと」「雨だから洗濯物が部屋干しで嫌だな」「今のうちに晩御飯作ろうか」などと湧き出る思考でいっぱいになることはありませんか。
こういった現象は、無意識かつ自動的に起きていて、60~80%のエネルギーを消費しているといわれています。考えすぎると疲れるのはこのためなのですね。
マインドフルネス瞑想で思考が落ち着くと、デフォルト・モード・ネットワークの活動の抑制ができるようになります。
「今、この瞬間」に集中するという精神状態を続けられるようになると、不安や落ち込みなどのネガティブな感情を軽減し、幸福感が高まるといわれています。
【中長期的な効果①】自己認識力(セルフアウェアネス)が向上する
マインドフルネスの中長期的な効果として、自己認識力が向上することが分かっています。自己認識力とは、「自分自身の内面を深く追求し、自分がどのような状況や精神状態にあるかを自覚すること」また、「自分自身の性格、能力、思考パターン、感情などを明確にし、理解する能力」です。
自己認識力の高い人というのは、例えば自分が怒りを感じた時に「私は今怒っているんだ」と客観的に認識して、その感情をパッと意識的に捨て去ることができます。
反対に、自己認識力が低い人は、怒りの感情に引っ張られてしまいます。その後も些細なことでイライラしたりと不快感が続く人もいるでしょう。
子育てにおいても、睡眠不足や育児への不安感などからイライラが始まり、コントロールできずに感情的になってしまったあと、自己嫌悪に陥るという経験があるという方は多いのではないでしょうか。
マインドフルネスを継続すると、自分の思考や感情を客観的に捉えられるようになります。
結果的に、腹が立ったり不快に感じたりする出来事があっても、その感情に吸い込まれずに常に安定した感情をもって、日々の暮らしが送れるようになるのです。
【中長期的な効果②】様々な痛みの緩和が期待できる
マインドフルネスの中長期的な効果として、様々な痛みの緩和が期待できることが分かっています。
子育て中は、抱っこやおんぶなどで体の一部に負担がかかり、肩、首や腰に痛みを感じる方はとても多いかと思います。首、肩の痛みが頭痛に繋がってしまうこともあるでしょう。
痛みを感じたときに、その痛みから目を背けずに分かろうと集中することは、痛みを軽減するのに効果的だと研究で明らかになっています。
また、抱っこする回数は減ってきているというのに、腰痛や膝の痛みなどの慢性的な痛みがある場合、肉体的な問題だけではなく内面的なストレスも関係しており、ストレスに対する処理能力が高い人ほど、腰痛が治りやすいというデータもあるそうです。
子育て中は、自分の時間もなかなか確保できないこともあるかと思います。マインドフルネスを取り入れると、自分の体、感覚や心に意識を向け、痛みの原因がどこからきているのかを観察できるようになります。
痛みをゼロにすると考えるのではなく、痛みと上手に向き合い、コントロールし、毎日の生活がより良いものになるように目指していきましょう。
マインドフルネス瞑想のやり方
1. 姿勢を正して座る
座禅を組むような決まった姿勢である必要はありません。ポイントは、背筋をピンと伸ばし、重心が真っすぐに座骨に落ちるイメージで安定した姿勢を保つことです。
片足だけを太腿に乗せる半跏趺座(はんかふざ)や、胡坐など、自分が安定して座れる組み方が決まったら、両手をそれぞれ両膝の上に乗せ、手の平を上に向けましょう。
足を組む動作が難しい場合は、椅子に座って行います。膝を軽く開き、足の裏はぴったりと床に着けましょう。
両方の耳、肩と腰骨が垂直になり、鼻の下にお臍がある状態が真っすぐな姿勢です。この時、反り腰にならないように注意をしてください。
次に、体をゆっくりと左右に揺らしましょう。その揺れをだんだんと小さくしていき、左右均等に体重をかけるイメージを持つことが大切です。
2. 自分の呼吸にしっかりと意識を置く(呼吸瞑想)
腕や肩を脱力し、無理のない姿勢で楽にして呼吸を整えます。最も大切にしてほしいポイントは、呼吸をコントロールしないことです。
起きていても寝ていても、生命を維持するために私たちは絶えず呼吸をしています。日々の暮らしの中で、当たり前に行っている呼吸を意識した経験はありますか。
呼吸瞑想とは、私たちが無意識にしている自然な呼吸にしっかりと意識を置き観察することです。
鼻から吸って気管を通り、肺に送られる空気をイメージしてみましょう。また、呼吸とともにお腹が膨らみ縮んだり、肩がゆっくりと上下したりする体の変化をただひたすらに感じます。「今、息を吸っている」、「今、息を吐いている」という感覚をとらえてみましょう。
3. 感情や思考が浮かんできても、追いかけずに呼吸に戻る
瞑想をしている間、注意力が散漫になることがあります。
まずは、「自分の心や思考はあちらこちらに動き続けるものだ」と、自分自身で気が付くことがとても大切です。雑念がでてきても、「今自分は、こんなことを考えた」と気が付き、また瞑想に戻るという繰り返しです。
集中できない自分を責めない、浮かんできた思考や心の動きを追いかけないことが重要です。意識が逸れたとしても、静かに呼吸に意識を戻しましょう。
「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」
「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず(ねんねんさいさいはなあいにたり、さいさいねんねんひとおなじからず)」
これは、中国の詩人である劉庭芝(りゅうていし)が詠んだ「白頭を悲しむ翁に代わりて」という詩の一節です。
「毎年花は同じように咲くけれども、その花を見る人は同じではない」という意味です。
この詩の一節にあるように、花は毎年同じように咲きます。しかし、子どもは毎年どんどん大きくなります。
個人差はありますが、歩けるようになり、自分で服を着られるようになり、「いつそんな言葉を覚えたの」と驚かされたり。常に傍にいないと泣いていたのに、いつの間にかお友達と遊べるようになっていたり。
できることが増えていく喜びと、着実に親から離れていく寂しさを日々感じている方もいるかと思います。
「今、この瞬間」の子どもにしっかりと向き合っていきたいものです。
子育てに疲れていると気づいたら呼吸に意識を集中してみよう
子育てが終わった人が皆していう言葉は、「あっという間に大きくなった」「子育てをもっと楽しめばよかった」です。
子育てをしていると、思うようにいかないことばかりで、いつもだったら気にならないことでも、自分の心に余裕がない時はきつくあたってしまい、そのような自分が嫌になることもあるでしょう。
まずは、「私は今、疲れている」と気づいてあげることが大切です。そして、数分でもいいので、自分の呼吸に意識を集中させるマインドフルネス瞑想を行ってみましょう。
ゆっくり息を吸い、ゆっくりとまた息を吐き出す、これを繰り返し行ううちに、深い呼吸になり、気持ちも落ち着いてきます。
二度と巡っては来ない、貴重な今日という1日を大切に過ごすこと。
今、この瞬間の我が子の可愛らしさを目一杯楽しむこと。
簡単にはいかないかもしれませんが、マインドフルネスに子育てを楽しみませんか。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。