うつ病にマインドフルネスが効く理由

うつ病とマインドフルネス
マインドフルネス瞑想は、うつ病の治療や予防に役立つ心理療法のひとつとして、科学的にも効果が実証されています。
しかし、マインドフルネスが本当にうつ病の改善に効果があるのか疑問を感じている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
うつ病の方にみられる1つの症状として、ネガティブな思考に偏りやすくなってしまうことがあります。過去の出来事を思い出しては、後悔や反省を繰り返す「ぐるぐる思考」から抜け出すための対処法として、マインドフルネス瞑想が効果的であると考えられているのです。
マインドフルネスになることで、自分の感情を上手にコントロールできるようになり、思考と感情の安定をもたらします。
今回は、うつ病とマインドフルネスの関係や、マインドフルネス認知行動療法の基本である呼吸法も合わせて解説します。
うつ病とは?
うつ病とは、気分が激しく落ち込んで憂うつになったり、やる気が出なかったりなどの精神的な症状がみられます。また、眠れなかったり、疲れが取れにくかったりなどの身体的な症状が現れることもある病気です。
気分が落ち込んだり、何となく憂うつな気持ちになったりすることは、毎日の暮らしの中で誰もが経験します。憂うつな気持ちは、気分転換や時間の経過などにより晴れていき、少しずつ元通りになっていくものです。
しかし、うつ病の場合は、気持ちが落ち込む原因が分からないといいます。たとえ落ち込む原因となっている問題が解決したとしても、気分が晴れることはなく、体が動かない、何にも興味が沸かない、食欲がないなど日常生活に大きな支障が出てきてしまうのです。
うつ病の治療方法
厚生労働省の「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」に掲載されていた、うつ病の治療方法は、以下の3つです。
・休養 ・・・休養を十分にとり、心と体を休ませる
・薬物治療・・・効果はすぐに現れるものではないが、焦らずに服薬を継続する
・精神療法、カウンセリング・・・認知行動療法や対人関係療法など
次の項目では、3つ目にご紹介した「認知行動療法」に焦点を当てていきたいと思います。
認知行動療法とは?
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)は、CBTとも呼ばれます。うつ病をはじめ、さまざまな心の病に対して、有効性があると医学研究で立証されている心理療法です。
認知とは、「ものの受け取り方や考え方」という意味を表しています。認知や行動に働きかけて、気持ちを楽にしたりストレスを軽減させたりする治療方法です。
負のスパイラル
何か嫌なことが起きたとき、以下のような負のスパイラルに陥ってしまった経験はありませんか。
嫌なことが起きた➡不安や憂うつな気持ちになった➡その感情に伴いネガティブな思考が出てきた➡さらに不安や憂うつな感情が増えた➡
このような負のスパイラルから抜け出せなくなると、不安な気持ちがずっと続いた状態になり、うつ病へと発展すると考えられています。
うつ病の症状のひとつに、ネガティブな思考に偏りやすくなるという点が挙げられます。現在のことだけではなく過去の出来事を思い出し、気に病んでも仕方のないことを繰り返してしまう思考が習慣になってしまうのです。
これは、「ぐるぐる思考(反芻思考)」ともいわれています。
このような状態では、思考や感情が互いにもつれ合い、自分を見失い、「今、この瞬間」の現実をありのままに受け止められなくなってしまいます。
そこで、マインドフルネス瞑想を実践し「今、この瞬間」に意識を向けることで、思考を客観視できるようになります。
ネガティブな思考が繰り返されるぐるぐる思考から抜け出すための対処法として、マインドフルネス瞑想が効果的であると考えられているのです。
自分の感情を上手にコントロールできるようになり、思考と感情の安定をもたらします。
実際に、うつ病の再発予防効果が認められたという根拠も得られているのです。
マインドフルネスとは?
マインドフルネス学会において、マインドフルネスはこのように定義されています。
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」
私たちは、無意識のうちに過去への後悔や、未来への不安などに意識を向けてしまいがちです。後悔や不安などについて繰り返し考えていると、それらは心と体の中でどんどん大きくなっていき、私たちを悩ませ苦しめます。
「今、この瞬間」目の前で起こっている現実を意識し「ただ観る」ことにより、後悔、不安や怒りなどのネガティブな感情を受け入れて、精神的な不調を改善するのに役立たせることができると考えられています。
医療の分野にマインドフルネスを導入
マインドフルネスの効果を医療の分野で役に立つのではないかと考え科学的に実証を重ねていったのが、アメリカマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士です。
1979年に「マインドフルネス・ストレス低減法(マインドフルネス瞑想法)」を発表します。うつ病の改善や疼痛が和らぐなどの効果が脳科学の分野で確かに認められ、広く世界に知られることとなりました。
また、心理学の分野においては、自己認識力、衝動の抑制等に良い影響を与えると確認されています。
マインドフルネス認知行動療法(Mindfulness Based Cognitive Therapy)
マインドフルネス認知療法とは、マインドフルネスストレス低減法と認知行動療法を組み合わせたものです。
うつ病を繰り返す患者さんに対して、再発防止の効果があると実証されており、心に病を抱える方への治療方法としても活用されています。
また、ビジネスの世界においても、ストレスをコントロールしたり、仕事の生産性を向上させたりなどの目的で活用されているのです。
マインドフルネス認知行動療法の方法
ここからは、マインドフルネス認知行動療法の基本である呼吸法の実践方法を解説します。
① まずは、背筋をまっすぐ伸ばして椅子に座りましょう。ポイントは、背筋をピンと伸ばし、重心が真っすぐに座骨に落ちるイメージで安定した姿勢を保つことです。
膝を軽く開き、足の裏はぴったりと床に着けましょう。
両方の耳、肩と腰骨が垂直になり、鼻の下にお臍がある状態が真っすぐな姿勢です。この時、反り腰にならないように注意をしてください。
② 腕や肩を脱力し、無理のない姿勢で楽にして呼吸を整えます。最も大切にしてほしいポイントは、呼吸をコントロールしないことです。
鼻から吸って気管を通り、肺に送られる空気をイメージしてみましょう。また、呼吸とともにお腹が膨らみ縮んだり、肩がゆっくりと上下したりする体の変化をただひたすらに感じます。「今、息を吸っている」、「今、息を吐いている」という感覚をとらえてみましょう。
私たちが無意識にしている自然な呼吸にしっかりと意識を置き観察するのです。
③ しばらくすると、注意力が散漫になり心がさまよい始めるかもしれません。(これを、マインドワンダリングといいます)
まずは、「自分の心や思考はあちらこちらに動き続けるものだ」と、自分自身で気が付くことがとても大切です。雑念がでてきても、「今自分は、こんなことを考えた」と気が付き、また瞑想に戻るという繰り返しです。
集中できない自分を責めない、浮かんできた思考や心の動きを追いかけないことが重要です。意識が逸れたとしても、静かに呼吸に意識を戻しましょう。
④ 心はどのような状態でしょうか。穏やかさを感じているかもしれませんし、そうではないかもしれません。
心が静かに落ち着いていると感じたとしても、それは過ぎ去っていくものであるように、腹を立ててしまいたくなるような怒りを感じたとしても、それもまた過ぎ去っていくものなのです。
マインドフルネス瞑想がうつ病を悪化させる危険性
マインドフルネス瞑想は、基本的に安全ですが精神疾患の症状を悪化させる危険性があるということも忘れないでください。
うつ病だけではなく、統合失調症や強迫性障害などの精神疾患を抱えている方は、瞑想を行い余計な思考を失くそうとすることで、自分の問題点や不安な部分に意識が向いてしまいます。その結果、症状が悪化する可能性があります。
また、PTSDなどの心的外傷後ストレス障害をお持ちの方も、瞑想を行い過去のトラウマが表面化してしまうことが考えられます。
万が一、マインドフルネス瞑想を実践して不安な気持ちが強まった場合は、速やかに主治医や心理カウンセラーに相談することをおすすめします。
うつ病の方がマインドフルネス瞑想を行うにあたっての注意点
マインドフルネス瞑想には、うつ病の再発予防効果があることも実証されています。
しかし、逆に症状が悪化してしまう可能性もあるため、マインドフルネス瞑想をやってみようと思っている方は、必ず主治医や心理カウンセラーに相談しましょう。
安全に行える状態であるかどうかを確認することが重要です。
また、うつ病の方は真面目なひとがなりやすいともいわれていることから、うつ病の方がマインドフルネス瞑想を実践すると、頑張りすぎて疲れてしまい効果が十分に得られない場合もあります。
無理のない範囲でマインドフルネス瞑想を行うことがとても大切です。
マインドフルネスはうつ病の改善に効果が期待できる!注意点も頭に入れておこう
今回は、うつ病とマインドフルネスの関係をはじめ、呼吸方法や注意点について解説しました。マインドフルネスとは、過去や未来ではなく「今、この瞬間」ありのままの自分の心と体に意識を向け集中している状態をいいます。
マインドフルネスが、うつ病の治療や予防に役立つ心理療法のひとつとして、科学的にも実証されています。
ただし、うつ病の方がマインドフルネス瞑想を行うにあたっては以下のような注意が必要です。
・マインドフルネス瞑想を行う前に必ず医療機関に相談する
・マインドフルネス瞑想を行うことで、症状が悪化する可能性もある
また、無理のない範囲でマインドフルネス瞑想を行うこと、頑張りすぎないことがとても重要です。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。