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瞑想とマインドフルネス

芸術がもたらす癒しと気づき

マインドフルネスとアート鑑賞

突然ですが皆さんは、普段どのくらいの頻度で美術館や博物館に行かれるでしょうか。

芸術鑑賞が趣味だという方や、気になる展示が行われている時だけ美術館へ行くという方もいらっしゃるでしょう。

また、「アート鑑賞」と聞くと、なんとなく気後れしてしまったり、知識が無いから分からない、と遠ざけてしまったりするという方も多いのではないでしょうか。

アート鑑賞は、心に刺激や癒しを与えるといわれています。リラックスできたり、ストレスが軽減されたりなどの効果について、医学的、科学的にも研究がされているのです。美術館や博物館は、自分と向き合い、マインドフルネスになれる場所です。

今回は、アート鑑賞とマインドフルネスの関係、「対話型鑑賞」という美術鑑賞の方法を例に出しながら、マインドフルネスにアート鑑賞をするポイントをご紹介します。

アート鑑賞で得られるマインドフルネス効果

アート鑑賞は、私たちの心と体にリラックス効果を与えるといわれています。

美しい絵画や彫刻を見ることで、脳内のストレス反応が減り、喜びや快楽を感じる神経回路が活性化します。ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が放出されて、幸福感やリラックスした状態をもたらしてくれるのです。

また、目の前の作品を集中して見ることで、過去の後悔や未来への不安から離れて「今、この瞬間」に意識を向けることができ、マインドフルネスな状態になるのをサポートします。

医師会とミュージアムがタッグ⁉海外での取り組みとは

日本人が、美術館や博物館に行く回数は年間平均で1、2回ほどということが分かっているそうですが、海外ではどうでしょうか。

アメリカ各地にある美術館や博物館では、マインドフルネスプログラムを開催していたり、カナダやベルギーでは、医師会とタッグを組んだ素晴しい取り組みが行われています。

ここからは、その内容を詳しくご紹介します。

近代美術館MoMA

2024年現在は行われていないようですが、ニューヨークの近代美術館MoMAでは、2016年10月から「クワイエット・モーニングス」というマインドフルネスのプログラムが実施されていました。

「ゆっくりと芸術を鑑賞し、頭をスッキリとさせて、携帯電話の電源をオフにして、1日、そして1週間分のインスピレーションを得よう」というモットーで、集団で瞑想を行っていたそうです。

ニューヨークだけに留まらず、ワシントンD.Cやソルトレイクシティなど全米各地でマインドフルネスプログラムを開催する美術館や博物館が増加しているといいます。

出勤前に、美術館で瞑想やマインドフルネスを行う…そんなにゆっくりした気持ちになっていいのかと逆に不安になってしまいそうですが、猛スピードで過ぎ去っていく日々の暮らしの中で、たった数分でも、ゆっくり自分と向き合う時間を作るってとても大切ではないでしょうか。

モントリオールの国立美術館

カナダでは2018年から、カナダ・フランコフォニー医師会とモントリオール美術館がタッグを組み、心と体に様々な健康問題を抱えている患者さんに対して、「美術館への訪問」を処方箋として記載するというプログラムが始まっています。

美術館や博物館に行くと、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が変化するという実験結果も確認されたそうです。最大で、年間50回の無料券を提供しており、患者さんのご家族の方も同伴できるといいます。

ベルギーの美術館や博物館

ベルギーの首都ブリュッセルでも、2021年9月から3ヵ月間、医師が患者に「美術館や博物館への無料入場」という処方箋を出すというプロジェクトが試験的に実施されたそうです。

2021年というと、世界中でパンデミックが続いていた真っ只中。プロジェクトのリーダーになったのは、「アートの力で、人々のメンタルヘルスを改善したい」という想いを持った、ブリュッセルの市会議員デルフィーヌ・フーバさんでした。

先ほどご紹介した、カナダで行われていた美術館の処方箋がきっかけになったといいます。

美術館や博物館というのは、静かで、なんだか少し緊張してしまいませんか。また、館内が混んでいたら、なんとなく集中が出来なかったり、ただ廻っただけになって疲れてしまったり、という経験のある方もいるのではないでしょうか。

しかし、全くもって反対で、美術館や博物館が「リラックスできる場所である」という思いもしなかった事実に少し動揺してしまいました。

美術館や博物館へ行くときの、心構えのようなものが少し変わった気がします。

マインドフルネスなアート鑑賞のポイント!VTSとは

実際に、皆さんは美術館や博物館などに行ったとき、絵画や彫刻作品などを目の前にして、どのくらいの時間をかけて1つの作品と向き合うでしょうか。

調べてみると、1つの作品の前での平均滞在時間は約1分ということが分かっています。たった1分という短い中で、約10秒間その作品を見て、残りの約50秒でその作品の解説文を読んでいるといいます。このような状態では、作品と向き合うどころか心が落ち着かないのではないでしょうか。

日本マインドフルネス学会において、マインドフルネスの定義は、『今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態でただ観ること』とされています。

ここでご紹介したいのは、VTS(対話型鑑賞)です。目の前の1つの作品とマインドフルネスに向き合い、誰もがアート鑑賞を心から満喫するためのポイントを3つご紹介します。

Visual Thinking Strategies(対話型鑑賞)

Visual Thinking Strategies(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)を略して、VTSといいます。対話型鑑賞とは、1980年代に、近代美術館MoMAで教育部長を務めていたフィリップ・ヤノウィンさんと、認知心理学者のアビゲイル・ハウゼンさんによって開発された、美術鑑賞の手法です。

対話型鑑賞の特徴は、作品を見て、その場で感じたことや想像できたことなどを自由に対話するところにあります。作品の解説文に記載してある背景や作者の生涯などの情報は抜きにして、作品に向き合うのです。

他の人の意見も聞きながら作品の見方を深めていくという鑑賞方法で、以下のような力を伸ばす効果が期待できると考えられています。

・絵画や写真など視覚的な情報を読み解く思考力
・言葉にして伝えるためのコミュニケーション能力
・人の話や意見を聞く傾聴力

対話型鑑賞が開発された当初は、子どもの教育プログラムとして知られていたものですが、近年では学校や企業で教育方法の1つとして注目をされています。

ここからは、対話型鑑賞の手順に沿って、アート鑑賞のポイントを3つ解説します。

1. 予備知識なしで作品自体を見よう

まずは、解説文は読まずに目の前の作品を10〜20分間かけてじっくり見てみましょう。絵画でも彫刻でも構いません。どんな印象を受けるのかを意識して鑑賞してみます。

ここで大切なのは、「この作品の正解は何だろう」と考えないことです。作品に対して、どのように解釈するか、何を感じるかは自由です。

2. 自分自身で問いかけよう

先ほどご紹介した対話型鑑賞では、他の人の考えを聞きながらその作品に対する様々な解釈を深めていきます。円滑に対話を進めるために、進行役の方が鑑賞者に3つの質問を投げかけるそうです。

・この作品の中で、何が起こっていますか?
・どこからそう思いましたか?
・もっと発見はありますか?

実際に、これらの質問をされてすぐに答えるというのは難しいと感じるかもしれません。

直感で気になった作品があった場合、まずは「どうして気になったのだろうか」と、自分に問いかけてみるのはいかがでしょうか。

「好きか、嫌いか」という、シンプルな問いでもいいのです。

感じたことをありのまま受け止めよう

作品に正解はありません。「自分にはこんな風に感じる」と言葉にして、感じたことを全てありのままに受け止めましょう。五感を研ぎ澄まして目の前の作品に集中して観ると、集中力や注意力が高まります。

美術館や博物館で1つの作品に向き合った時、自分なりの見方や答えを見つけることは、マインドフルネスにも繋がっているのではないでしょうか。

美術館や博物館はマインドフルネスに自分と向き合う場所

アート鑑賞に、正解はありません。目の前にある1つの作品と向き合い、問いかけ、自分が感じたことをありのままに受け止めましょう。美術館を1人で訪れるのもいいですし、どなたかと行く機会があれば、対話型鑑賞をしてみるのはいかがでしょうか。

・この作品の中で、何が起こっていますか?
・どこからそう思いましたか?
・もっと発見はありますか?

ざっくばらんに対話をして、ひとつとして同じ答えがないということを楽しんでみましょう。

また、アート鑑賞は、私たちの心と体にリラックス効果をもたらしてくれます。カナダやベルギーなどで行われている「美術館や博物館への訪問」の処方箋を渡すという素晴らしい取り組みが、日本でも始まることを願わずにはいられません。

芸術の秋、国内外問わず、美術館や博物館のスケジュールを調べてみるのはいかがでしょうか。マインドフルネスにアート鑑賞をすることで、新たな発見や、自分自身の感情に気づくことに繋がります。

今までとは少し違った見方ができるかもしれないと思うと、ワクワクしませんか。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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